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丸の内" マネとモダンパリ展 ":20100411 [絵画]

奥が深すぎてよけいにわからなくなった・・・。これが率直な感想。

普通、まとまったものを観ると、例えばコロー展のように自分なりに理解しすっきりして帰ってくるものなのですが、今回の展覧会は余計にカオスがこころの中に広がってしまいました。

でも、その意味では、この展覧会すごいのかもしれない。

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じぶんにとっては、今年になってはじめての本格的な絵画展。

こころの中がパタパタしていて、なかなか絵を見ようという余裕を持つことが出来ませんでした。正直、気力もなく、こんなこころで好きな絵の前に立ったとしても、絵は何も語ってくれないと分かっていたからです。
でも、友達ともしばらく会っていませんし、そろそろ" 見たい臨界点 "を超えそうだったので、思い切って友達を誘って出かけてみました。

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4月6日に新しくオープンした「三菱一号館美術館」に" マネとモダンパリ展 "を 見に行って来ました。
東京丸の内に突如現れた?赤レンガ造りの美術館。
コケラ落としは、マネ。なかなか渋い選択だなぁ~・・・、というよりも新しいもの好きな自分です。
新しい美術館、ならば!! (笑)

丸の内南口から歩いてすぐのところ、高層のオフィス街の一角に妙になじんでいる美術館。大きな展示ホールというよりも、いくつかの小部屋が合わさっての展示スペース。これはこれで、起承転結がはっきりしてよいのかもしれません。国立や公立の大きな美術館とはまた違ったこじんまりとして落ち着いた感じ。平日に来るともっとアットホームなカジュアルさを感じる美術館なのかもしれません。

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" すみれの花束を付つけたベルト・モリゾ " パリ、オルセー美術館 1872年
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" 横たわるベルト・モリゾの肖像" パリ、モルマッタン美術館 1873年
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" ヴェールをかぶったベルト・モリゾ " ジュネーブ、プティ・パレ美術館 1872年
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3枚とも、弟子で後に義理の妹になるベルト・モリゾの肖像画なのですが、着ている物が黒であることにより同一人物であることが分かるものの? 同時期に同じ画家が描いたものだとは思えません。3枚目は論外かも(笑)、普通であればモデルは怒りますよね。

展覧会を最初から最後まで見ての印象は、これほど多様性を持っている画家は他にはいないのではないかということでした。
ピカソも色んな顔を持っていますが、でも、これほどではないです。他の画家達も作風や代表する作品ということでは頭にイメージが浮かびます。でもマネって少なくともぼくの中ではそういう画家ではない。ゴヤ風の作品から印象派、後期印象派、色んな要素が交じり合って、どれがマネ? 展覧会を観て、そういう感じがとても強まりました。
但し、バロック音楽の通奏低音のようにどの画にもマネが存在しているのも分かるのです。サロン風の既製の絵画ではなく作風や技法にとらわれずに書きたいものを書きたい、そんなマネの感じは展覧会全体から伝わってきました。
何なんだろう・・・? 結局、分からずに帰ってきてしまいました。

そして、この画は今回出展された画の中で一番自分がひかれた作品。

" 街の歌い手" ボストン美術館 1862年
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見ていると、引き込まれそうな感じがしました。
酒場から酒場へと歌い歩く女性を描いた作品ですが、緑色かかったように見えるグレーが輝いているように見え、そのうちにとても詩情的なものを感じました。
画面が語りかけてくるようで、いつまでも見ていたいそんな感じの一枚でした。

また、こんな画をマネが書いていたのも新発見です。

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素描やリトグラフでネコをずいぶんたくさんと書いているのです。

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これなんか、日本の墨絵を意識しているのかもしれません。マネも当時のジャポニズムの影響を色濃く受けていたようです。

それにしても可愛い猫達。

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美術館の裏庭はこんな感じでとても丸の内とは思えません。近くで美味しそうなランチをやっているお店が何軒もありました。
ワインとオムレツに惹かれましたが、友達とは秋葉へ。

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久しぶりに会って、まだ昼を少し過ぎたばかりでしたが、いつものお店でビールをクイクイ(笑)

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画を見て、ビールを飲んで・・・、こういう時間はやっぱり大切にしたいです。

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マネ展、
マネの作品をこれほど一度に見た事はありませんでした。
スペインの影響やその他の同時代の画家達からの影響が良く分かりました。
画風や技法など多様性を持つ画家なのだと再認識。

そして、この日には分からなかったのですが、こうしてブログにまとめていたら、気が付いたことが一つあります。
マネにどうしてひかれるのか・・・。それは、マネの画から感じる" 詩 "にあるのではないかなと。
展覧会で引き込まれそうになった" 街の歌い手"で感じたのは、色彩と形とで表した" 詩 "なんだと、そんな風に思いました。

カオスはひとつ去りました (笑)

" 2010/04/11 Monet et le Paris moderne "
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DOGU 展:20100211 [絵画]

娘と久々のデートです。

小さい頃は公園などへよく2人で出かけたものですが、最近は学校も忙しく、土曜日も授業があるので2人で出かけるという機会はほとんどありません。
それに、興味のあるものも女の子らしくなってきたから、母親とは出かけるけれど、だんだんとぼくと出かける機会は減るのでしょうね・・・。

チケットを2枚もらってあったので、" 土偶展 " に行って来ました(笑)

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東京国立博物館で2月21日まで開催されています。
土偶は全国で約18,000点発見されているそうですが、そのうち国宝に指定されているのは3点。
その3点が一緒に見ることができるのは今回が初めて。
なんでも、イギリスの大英博物館で昨年開催された" THE POWER OF DOGU " の帰国展覧会なのだそうです。

" 初めて "、" 限定 " は大好きです(笑)。 娘も、教科書で見たことがあると言って、興味津々。

博物館はかなり混んでいました。ぼくらのような方達でいっぱいなのでしょう ^^;

おや? 何回も来ていて気が付きませんでしたが、ここにも立派な鬼瓦がいるんですね。

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肝心の展示物は、合掌土偶、中空土偶、縄文のビーナス の国宝トリオの他、全部で60点あまり。

国宝 合掌土偶 青森県八戸市風張1遺跡出土
縄文時代後期(前2000~前1000)

座り込んでひざの上で両手を組んでいます。何かを祈っているかのよう。お産の様子という人もいるようです。

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国宝 中空土偶 北海道函館市著保内野遺跡出土
縄文時代後期(前2000~前1000)

これ、中が空洞なんです。どうやって作ったんでしょうね。中空土偶としては最大級のもの。

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国宝 縄文のビーナス 長野県棚畑遺跡出土
縄文時代中期(前3000~前2000)

見ていてなんとなく縄文のビーナスって感じが分かります。この辺は、シュメールやメソポタミアの地母神、ヴィーレンドルフのビーナスなどと共通点がありますね。

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重文 遮光器土偶 青森県つがる市亀ヶ岡遺跡出土
縄文時代晩期(前1000~前400年)

これは、絶対宇宙人です。
いくら、想像力豊かな古代の人々でも、何かを見ずにこんな発想ができるものなのでしょうか?
マヤの遺跡とか、インカとか・・・ etc etc 、色々と思い出し、国立博物館の土偶の前でしばし空想の世界にふけってしまった父と娘なのでした(笑)

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もう少し空いていればゆっくりと見ることができたのでしょうが、
展示室も狭く人でいっぱいなので、一通り見て博物館を後にしました。それにしても、縄文の人々の豊かな想像力、意匠力の高さには改めてびっくりさせられました。日本列島のご先祖様達に脱帽です。

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その後、銀座の " ウエスト " さんへ。

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「何か食べる?」 「お腹すいた?」
「甘いものが食べたい。」 
「じゃ、銀座に出ようか。」 

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昔は銀座に良く出かけたのですが、最近はご無沙汰で、知っていた店もずいぶん少なくなってしまいました。
喫茶店も良いところがたくさんあったのですが・・・。

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" ウエスト " さんは、昔のままです。
そういえばむかーーし、あの席に座って話したことがあったなとか・・・。
遠い目・・・(笑)。

ベートーベンの顔もそのまま、かかってるCD はMozart のジュピター。

娘は" フロメスト "、オレンジピール入りチーズケーキをパイでサンド したもの。じぶんはイチゴのミルフィーユ。それぞれケーキセットを頂きました。

たまにはアルコール抜きも良いです。

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可愛いのがいたので、博物館でゲットしてきました。

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こちらは娘のお土産たち。

なぜか? " 土偶展 " で買ってきた埴輪の馬くん(笑)と、" ウエスト " のリーフパイ、ホットジンジャータルト(美味しかったです)。

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たまには、また一緒に出かけてみたい、娘とのデートでした。
土偶たちを見た後、久しぶりに手をつないで上野公園を歩いたり・・・(笑)。

" 2010/02/11 DOGU & WEST "

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新山種美術館:速水御舟展20091101 [絵画]

画が見たい。 久しぶりに、臨界点を突破 (笑)。
Beethoven が聴きたい!!

と言うことで???
Walkman に ピアノコンチェルトNo.5 Rubinstein を録れて11月1日、新しくなった山種美術館まで出かけました。
何回か書いているかもしれませんが、Rubinstein のBeethoven Piano Concerto No.5 大好きです。
大きなBeethoven 。さすがマエストロ。しばらく聴いていないと、無性に聴きたくなる。
かっぱえびせん、ポテチ・・・、カップラーメン、みたいな? (笑)

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新美術館開館記念特別展として 「速水御舟 ― 日本画への挑戦 ―」 が29日まで開催されています。
山種美術館と言えば・・・、やはり、御舟。  ^^v

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「炎舞」、やはりすごい作品。
先ずは、この画が見たくて出かけたようなもの。それと、場所が恵比寿ですから・・・、それはもう、友達と約束したときから、帰りは一杯飲むことに・・・ (笑)


「炎舞」、この展覧会のポスターにもなってる画です。御舟は毎晩焚き火をして炎とそれに集まる蛾たちを観察したそうです。そして、この画に。
象徴化された炎が空に渦を巻きながら上っていく。9匹の蛾がそれに自身を燃やすように巻き込まれていく・・・。こんな作品、他には見たことありません。蛾はどこまでも写実的で、書かれている蛾はちゃんと種類が特定できるそうです。そして、抽象化されている炎は古典に準拠している。写実と古典との融合なのだと思います。そして、一番すごいと思ったのは、炎と蛾の周りの夜の闇です。この色すごいです。炎だけに気を取られていると気が付かないかもしれませんが、是非、この暗闇の色を見てください。御舟さん自らも、もう一度書けといわれても出せない色っていっています。

1925年 31歳 120.3×53.8cm  重要文化財
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これは、「名樹散椿」。はじめて見ました。
最初は違和感があって・・・、画と向かい合って、とても不安定な気持ちになりました。ただ、しばらく見ているうちに、それはなくなって・・・。どうしてそうだったのかと考えると、最初は琳派の屏風絵のような感覚で見ていたからだと気が付きました。そうではなくて、御舟の画としてみるととても面白いことに気が付きました。これも椿の花はとても写実的です。でも、椿の老木自体は大胆にデフォルメされていて、フォービズムかキュビズムのようです。枝の表現がすごいなぁと・・・、そして、とても気に入ってしまいました。

1929年 35歳 167.9×169.6cm  重要文化財
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色んな技法の色んな種類の画が展示されていましたが、その中でこの画もとても気になりました。
「灰燼」。関東大震災の後の風景を描いたもののようです。未発表の作品で、御舟の死後に画室で発見されたとのこと。どうして、こんな風に建物を、風景を描けるのでしょう? すごいです。
そして、見ていると、こころのある部分が揺り動かされるのはなぜでしょう。とても静かな感じですが・・・、風の音だけ聞こえてきそうです。

1923年 29歳 37.6×56.7cm  
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これは未完大作である「婦女群像」の下絵です。とても大きなもので、下絵なのですが、見ていてすごい迫力・・・圧倒されました。すごい・・・。
完成したものを、ほんとうに見てみたかったです。解説にも書かれていましたが、完成していたら、その後の日本の画壇は変わったものになっていたのかもしれません。かって、多分、こんなに大きな群像は書かれたことはなかったのでしょう。

1934年 40歳 228.5×307.0cm
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ヨーロッパに行って数々の名画を鑑賞し影響を受けた御舟。影響そのものでなく、オリジナルとして昇華し、きっと素晴らしい絵になっていたはずです。人物も少しデフォルメされていてマニエリスムっぽく引き伸ばされたりしている。制作している途中でヤニが画面に浮かび上がってしまい、描きなおすことにしたようですが、急に腸チフスに罹り、御舟は帰らぬ人になってしまいました。
返す返すも残念です。

1934年 40歳 219.0×308.7cm
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「速水御舟 ― 日本画への挑戦 ―」 

色んな画があってとても興味深い展覧会でした。

「梯子の頂上に登る勇気は尊い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に尊い。」

御舟は、このように述べていたようですが、それがほんとうに良く分かる展覧会でした。ひとつの成功に安心しない、常に新しいものを探求し続けていく、そんな御舟の心意気が良く分かります。あんなに素晴らしい「炎舞」の技巧、それを進めて言っても良かったと思うのですが(一つの到達点だと思います)、あっさりと捨てて次の探求に向かう・・・。常に挑戦し続けた御舟、すごい画家さんだと思いました。会期は残り少ないですが、お勧めの展覧会です。

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そして、展覧会の後は、恵比寿ですから・・・(笑)

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ここは、琥珀エビス、大ジョッキーで、締めとしました。

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つまみは、ランチセット ^^v

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良い展覧会、すごい画、美味しい~琥珀エビスの大ジョッキー・・・、もう何もいりません(笑)

そして、ガーデンプレイスには、ツリーの準備が始まっていました。もう年末なんですね。

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" 2009/11/01 Hayami Gyosyu & Beer "
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フランス絵画の19世紀展:20090712横浜美術館 [絵画]

美術館が好きです。

無性に画が見たくなるときがあり、そんな時は気に入っている曲だけ連れて一人で出かけます。
嬉しいことに東京にはたくさんの美術館があって、気まぐれな自分の欲求を満たしてくれる展覧会が、何かしらどこかで開催されています。

こんな時に思うことは「東京の近くに住んでいて良かった」 (笑)。

特別展で見たいものがない時は、東京のブリヂストン美術館か地元の横浜美術館へ。

ブリヂストン美術館は、学生時代、京橋でバイトをしていた時によく通った美術館。
印象派の絵画を中心とし、そして何と言っても好きなルオーの画があります。古い友達のような画・・・。
横浜美術館はシュルレアリスムの作品と写真の収蔵も多い美術館、なんといっても地元です。

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画を見たい症候群が臨界点を突破したため(笑)、
先週の日曜日に横浜美術館まで出かけてきました。開催されているのは「フランス絵画の19世紀展」。

たいしたものではないのですが、ぼくに少しだけ絵画の知識があるとすれば、これらの本のおかげ、

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いえ、これらの本を含め数多くの名著を書かれている、高階秀爾先生のおかげです。

最近、また古い本ですが、「近代絵画史」を読み返していました。ゴヤからモンドリアンまで、西洋近代美術史を新書2冊にコンパクトにまとめたものです。
ダヴィッド・アングルなどの新古典主義、アカデミズムから、ドラクロア、クールベ、マネ、そして印象派へ、形式にとらわれずに絵画が自由に、よりパーソナルに心の世界へ向かっていく、そんなプロセスが秀爾先生の分かりやすく読みやすい文章で綴られている上巻。
ちょうど、それとピッタリの展覧会がすぐ近くで開催されています。ならば、行かねば !! (笑)

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横浜は開港150年、これを記念し、また横浜美術館開館20年を記念しての展覧会です。かなりの大作も出展されています。
開館時間10時に入ったため、ゆっくりと見ることができました。やはり画はぞろぞろと列を作って見るのではなく、ゆっくりとマイペースで鑑賞したいものです。
Walkman には、アルゲリッチのSchumann と Chopin のピアノコンチェルト。あの7枚組みのうちの一枚です。Schumann も Chopin も気に入っています。特にSchuman は、はじめの一音から素晴らしい。

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19世紀のはじめはアカデミズムが主流。
そこでは、描かれるものだけでなく、テーマも書き方も細かく規定されていました。どんなに上手に描いたとしても、ギリシアやローマに倣ったたくましい肉体の安定したポーズ、またテーマは歴史に沿ったものでなければ、価値は低いとされていました。

ミシェル=マルタン・ドロリング <アキレウスの怒り>

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しかし、そんな規則的なものに縛られた表現様式にとらわれずに、色々な対象を自由に描きたいという欲求は、やはり自然な流れ、心情なのだと思います。

ドラクロワの赤と緑、青とオレンジなどの色彩を高めあう補色を用いた「アルジェの女達」、また、クールベの英雄でも有名人でもない普通の村人を描いた大作「オルナンの埋葬」、マネのヴィーナスでもなんでもない普通の裸婦を描いた「草上の朝食」など、その流れを押しとどめるものはありませんでした(これらの画は出展されていません)。

アリ・シェフェール <糸巻きのマルガレーテ>

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黒と白、右と左・・・。物事は対立しながら、でも、長い目で見ると片方に大きくふれた後には必ず揺り返しが来るなど、調和をとりながら、あたかも螺旋階段を上っていくような、そんな進み方をするのだと思います。
アカデミズムから、ロマン主義、写実主義、印象派 etc etc ・・・。
絵画の世界もそうなのだと。ひとつの様式はまた別の様式を取り入れ変化していく。アカデミズムの画家達も新しい様式を取り入れ、またロマン主義の画家達のベースにはアカデミズムの培ってきたものが綿々と流れているのだと。

こうやって、展覧会で一枚一枚の画を年代を追って見ていくと、その流れのようなものを実際に感じることができます。

一枚一枚の画も素晴らしいですが、その意味でも、価値のある展覧会だと思いました。タイトル通り、19世紀のフランス絵画の流れを俯瞰できる展覧会です。


素晴らしい画、大作が80点ばかり出品されていますが、ぼくがこの日気に入ったのは、このアリ・シェフェールの2枚。
いずれも、見ていると、心の中で感情の小波が湧き起こるのを感じました。
上は、ファウストのマルガレーテ。これから起こること、無意識の予感のようなものが不安が、画全体から感じられます。光の当たり方も決して劇的ではないですが、茶色の影がとても印象的な一枚でした。
下のものは、もっと静かな、静寂さを感じます。アップしたものでは分かりませんが、バックの青色がとても素晴らしくて、この色がとてもこの画にマッチしていると思いました。アリ・シェフェール、たぶん初めて見た画家だと思いますが、気になります。

アリ・シェフェール <聖アウグスティヌスと聖モニカ>

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これは、クールベ。
裸婦を描いたものも何点か出展されていましたが、アカデミズムではヴィーナスやオダリスクのテーマを借りて画かれていたものが、それらに限らずもっと自由に描かれるようになっていくのがよく分かりました。

ギュスターヴ・クールベ <眠れる裸婦> 1858年

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上のクールベよりも後にかかれたものです。アカデミックな古典的な裸婦像。

アレクサンドル・カバネル <ヴィーナスの誕生> 1864年

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カバネルに師事したコランの裸婦です。
アカデミズムの画家ですが、先生とは違って神話の世界のものでなく、裸婦自体も理想化していなくて写実的になってきています。
まあ、そんなことを抜きにして、春の草原の可愛い花達と一体化している女性像にとても惹かれました。ミレーの「オフィーリア」やバーンジョーンズ、ロセッティなどの象徴主義に一脈通じるところがあるように感じました。

ラファエル・コラン <花月>

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そして、印象派へ。
19世紀のフランス絵画、大きく変わりましたよね。
アキレウスから積みわらへ・・・ (笑)

画家たちは、描きたいものを自分の技法で、自由に表現するようになっていったことが、よーく分かりました。

クロード・モネ <ジヴェルニーの積みわら、夕日>

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明るい光をそのまま描くために、絵の具を混ぜずに(光と違って混ぜると黒になっていってしまいます)筆触分割の方法などを用いて描いたもの。形ではなくて、光が色彩がそこにはあります。晩年のモネの画には輪郭がなくなっています。
そしてこの後、また揺り返しが来て、セザンヌやピカソなどに向かうのですよね。

アルフレッド・シスレー <積みわら>
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この画もよかった。
戸口の外で施しを待つ者、窓からの明かりで影になっている母親、中央に光が当たって立つ少女。色合いも落ち着いていて、ミレーらしくほのぼのとした情感があふれる画です。

ジャン=フランソワ・ミレー <施し>

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Schumann と Chopin の Piano Concerto を聴きながら(周りの人に迷惑の掛からないように大きな音にはしません)ゆっくりと一人で鑑賞した後は・・・、喉が渇きました。
展覧会の余韻を楽しみながら、コーヒーを一杯頂いて、横浜美術館をあとにしました。

つづきの本の下巻も、早く読みたくなりました。

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「フランス絵画の19世紀展」、
今年4つ目の展覧会になりますが、本で読んでいたことを、本物の19世紀の素晴らしいフランス絵画達で確認でき、とても興味深く鑑賞できた展覧会でした。

でも、フランス絵画、やっぱりすごいや !!

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" 2009/07/12 Yokohama Museum Of Art "
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エゴン・シーレ:日本の美術館名品展20090606 [絵画]

とても気にかかっていました。

画面の中央、ダークブルーの炎の揺らめきの中の男。
シャツの白もただの白じゃない・・・。

スニーカーの黒を際立たせアスファルトを跳ねる雨。  休みの早朝。
ブルーの傘を差し駅へと向かう濃い灰色の道。
Bartok String Quartet No.2 Op.17 を聴きながらなので、雨の音は聞こえません。どこか、ずうっと深いところの青い炎を揺さぶるチェロの音。

土曜の朝はかなりの雨でしたが、エゴン・シーレの一枚に会いたくて上野まで出かけてきました。
美術館連絡協議会(公立美術館のネットワーク)の創立25周年を記念して、それぞれの美術館の代表作を一堂に集め、7月5日まで、「日本の美術館名品展」が東京都美術館で開催されています。
202点が展示されていますが、会いたいのは、19世紀末ウィーンの画家エゴン・シーレの「カール・グリュンヴァルトの肖像」。


京浜東北線を降りると、上野駅の公園口はすごい人です。
土曜日の早朝・・・、しかも雨。であれば、なぜにこんなに混んでいるのか?
そうです、ルーヴル美術館展が6月14日までなんですね。駅の中のチケット売り場もすごい列ができていました。もちろん、西洋美術館前にも人の列。100分待ち @@; だそうです。ぼくが見に来たときは混んではいましたが、こんな待ち時間表示の看板はなかった・・・。


でも、こっちの展覧会は空いていました。ゆっくりと見ることができました。

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ボナール、ミレー、シャガール、カンディンスキー etc etc ・・・、横山大観、小磯良平、萬鉄五郎、坂本繁二郎 etc etc ・・・、有名な画家さん達の傑作揃いが202点、ざっと見るだけでも2時間はかかります。
最初は、各画ごとに出展美術館からのメッセージが付いているので、それを読んでいましたが、とても全部は読みきれません。
それに、早くエゴン・シーレに会いたいのです。画を見るのにもパワーがいるので、シーレにたどり着くまでに全部を使い切るわけには行きません(笑)。
もったいないけれど、加速して通り過ぎました。

そして、「カール・グリュンバルトの肖像」

前にフェルメールの画に会った時と同じです。この画だけ光っています。
向かって左隣はカンディンスキー。右はピカソなのですが、両巨匠の絵よりも光って見える。シーレは28歳でスペイン風邪で亡くなってしまうのですが、これはその前年の作品。

ファーストインプレッションは「きれいな画」。白と青は個人的に好きな取り合わせ。エゴン・シーレのこの画、一目で気に入ってしまいました。
シーレは自画像と若い女性を多く描いていますが、その多くは歪んでデフォルメされています。青年期特有の理由のない居場所がはっきりとしない不安・・・。多分、感受性が強く、でも精神的に非常によわい青年だったのではないでしょうか。自画像の目などを見るとそう思います。
でも、この画、シーレには珍しい男性の肖像画。
普段省かれてしまう、手や足も多少デフォルメされているものの省略せずに描かれています。

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しばらく、じっとこの画の前にたたずんでいました。
シーレが見ていたものが伝わってくる・・・、そんな気がしました。白いシャツを着ているのですが、たくましい肉体を筋肉を感じます。白いシャツ自体もただの白ではありません。色々な色が、感じているものが溶け込んでいる。シャツであり肉体であり人そのものなのです、きっと。
そして、その姿はダークブルーを背景として、イスに座っているのですが、イスはその背景の中に溶け込んでしまっています。この背景はダークな心の・・・、屈折しているが、でもピュアな青の炎の様に思えました。
そして、年を取った自分の中にも、こんな炎の燃えかすがまだあるのでしょうか? どこか、心の遠くの方が揺らめくのが、かるくめまいがするように感じられました。

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シーレと向かい合っただけでかなりのパワーを消耗してしまいましたが、さすが名品展です。
この他にも惹かれた作品がたくさんありました。

これは、岡鹿之助の「遊蝶花」

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同じく岡鹿之助「信号台」。

岡鹿之助も気になっている画家の一人です。ブリヂストン美術館で展覧会があったのですが、見逃していました。ここで2作品を見ましたが、展覧会行けばよかった。

特にこの「信号台」を見ていてそう思いました。静かな光景ですが・・・、ルソーの絵を見た時のような懐かしさ抒情性を感じます。

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そして、これも気になる画家、佐伯雄三の「サンタンヌ教会」。
佐伯雄三も確か30歳くらいで結核で亡くなったのだと思いますが、この作品はいいなぁ・・・。
ユトリロの作品も展示されていました。同じようなパリの町並みを描いているのですが、こちらの作品の方が、ずうっと心を揺さぶられます。

昔は結核は不治の病なんですよね。
死というものをすごく身近に感じて、本来長い生涯の間に使うべきパワーを、残された短い間に全て使い切ってしまおうかとするように・・・。ろうそくが消えそうな時、一時的にパワーが強くなるような・・・、そんなものを・・・。
黒い輪郭線と、レンガ色がとても効いています。

ぼくもかなり前ですが、結核にかかったことがあります(昔でなくて良かった・・・)。でも、病気にかかった時、生命力が反比例的に強まるときがあったのを覚えています。

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かなりの情報量がある展覧会でした。もう少し、パワーがある時に見た方が良かったのかもしれません。少し、くたびれました。

でも、エゴン・シーレ・・・、素敵でした。
また一人、気になる画家が増えました。ウィーンに行ってたくさん見てみたいのですが・・・ハハハハハハッ・・・ハ ^^;


多分じぶんのブログ、しばらく休止しているような、でも時々は顔を出すような・・・、そんなことになりそうです。写真も、しばらくお休み・・・かもしれません。

" 2009/06/06 Egon Schiele "
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Louvre 美術館展 2009:20090307 [絵画]

目が眩んでいます・・・ ^^;     Johannes Vermeer って、時空を超越している・・・。


ダヴィンチもすごいし、モーツァルトもそうだと思うのですが、時代を超越して、もの凄い人間っているのですね。
時ってなんだろう ? 思想って? 科学って? 人間って、生命って、何なんだろう ?  生きることの意味とは ?
確かに、時空を超越して、もの凄い人間が、巨人が、ときどき、まれに、そこにいるのだと思うのです。

もしも、タイムマシンが、H.G.ウィリアムス ではないけれど、あったとして・・・、彼らを今の世の中に連れてきたとしたら・・・、
とても、面白い 「If ??」 ですね。 思うに、全然違和感ないのではないかなぁ。

今回、Louvre 美術館展を見て、率直にそう思いました。
目が眩んでいるのかもしれません・・・。 いや、きっと、くらくらなんです(笑) 。


でも、こんな風に思う画家は、あとは、Georges Rouault くらいです !!  ブリヂストン美術館のルオーの画も時代を超越していると思うのですが(ピエロの絵なのですが、ぼくにはそうは見えない・・・)、Johannes Vermeer は別格。
ルーブル美術館展の今回来ている他の70点の至宝の絵画と一緒に、「レースを編む女」を見て、本当にそう思いました。


土曜日は久々の一日オフでした。床屋にも行かないといけないし、カメラを持って写真撮りに行けばよかったと思うのですが、とにかく本能の指し示す方へーーーっ(笑)。
で、行って来ました、国立西洋美術館の「ルーブル美術館展」。

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高校時代からの親友からメールがあって、土曜日の午後1時30分にここで待ち合わせました。
絶対、間違えませんよね。(笑)

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待ち合わせの時間よりも、少し早く美術館に着いたのですが、
もちろん、カメラは持ってきているので、国立西洋美術館の庭で写真を撮りました。美術館、ユネスコの世界遺産にも登録を検討されているとかです。ロダンの「地獄の門」を始め、「考える人」とか、美術館に入らなくても、すごい美術品がそこにあるのです。

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惹かれたのは、ロダンのエバ。
アダムとエバの、あのエバです。
美しく、やさしくて、でも、それだからこそ、誘惑に負けてしまう・・・、そんなエバ。ぎゅっと自分の体を抱きしめ乳房に食い込む指が痛くないのか・・・。
その顔に、引き込まれそうになりました・・・。いかんいかんーーーっ ^^;

などと、思っていたら、友達が到着。 チケットは買っておいたので、そのまま美術館の中へ。
あっ、そうなんです。チケットを買う列はかなり並んでいました。もしも、前売りを持っていなければ、上野駅、公園口の改札を出る前の窓口でチケットを売っていますので、そこで買われた方が良いです。並ばずに館内に入ることができます。


そして、フェルメール 「レースを編む女」。

天気が良くかなり混んでいたので、彼女に会うまでに、かなり待ちました。でも、憧れの彼女に合えるのなら・・・、少しくらい待つのなんて、全然、苦になりません。
それでも、ここに来ている方達の多くの目的もこの画なんですね。遅遅として進まぬ人の流れ。これも、憧れの彼女に合うための試練(笑) 。

見て、すぐに、ガーーンと来てしまいました。
小品です。23.9×20.5cm 。フェルメールの中でもかなり小さいのではないでしょうか。
でも、ミルクを注ぐ女を見たときもそうですが、暗い美術館のなかでも、この画の周りだけは明るく感じるのです。画だけ、浮き立っていると思うのです。

フェルメールの作品数には諸説ありますが、一番多いのは37点? 。もちろん、全部好きなのですが、フェルメールは1675年になくなっているので、創作期間は1650年の中頃から1675年までの約20年です。その中でもぼくがすごいと、心底思える作品達は1650年代の終わりから1670年まで・・・。その最後くらいに位置するのがこの「レースを編む女」です。

しばし、釘付け状態になり、じっと見ていました・・・。
全体の印象にようやく慣れて・・・、そして、ふと、ようやく冷静になって細部に目をやります。
絵自体が小さいせいもありますが、視点がとても近い。他の作品に比べると画家の(ですから見る者の)視点がとても近いのに気が付きました。そして、きっと主題であろう編んでいる女性の輪郭もとても薄いのです。なぜだろう?
普通、絵って、焦点が合うところがある筈なのですが(遠近法での消失点なんかも)、この絵にはそういうものがないような気がします。

先ず、目立つのは白と赤の糸です。この白と赤の糸は美術史的にも近代的な描写方法だと有名なんだそうですが、確かにこの絵には不釣合いなくらい、鮮やかです。そして、その次に目に入るのは本(たぶん聖書なんでしょう)のリボン(?)、辿っていくと、彼女の手先になります・・・。
もしかして、これはフェルメールの術中に・・・、もしかするとはまっているのかもしれません。 ^^;

フェルメールって、色んな試行錯誤を重ねていて、それがとても魅力のある画家だと思うのですが、残念ながら、晩年は、行って欲しくない方へ行ってしまった様で(個人的にそう思うだけです)、ぎりぎり、そうでなくて書き上げたのが・・・、この「レースを編む女」なんだと思っています。

そのような意味で、ぼくにとっては、この絵は特別なんです。

見れば、見るほど・・・、味のある絵だなって、そう思います。  混んでいない時に、もう一度見てみたい・・・。

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またの再会を心に誓って・・・、でも、他にも素敵な作品はもちろんありました。気になった作品をいくつか紹介しておきます。

これは、レンブラント。自画像だそうです。レンブラントも、気になる画家です。1633年。

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そして、こちらはフランス・ハルスの「リュートを持つ道化師」 1624年。

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ジョルジュ・ド・ラ・トゥール。「大工ヨゼフ」  1652年。
すごく、劇的な感じがします。そして、大工ヨゼフの顔付きがとても印象的に心に残るのです。

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ドメニコ・フェッティ。「メランコリー」  1623年。
典型的なメランコリックのポーズです。なぜかひかれる、メランコリー。

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アドリアーン・コールテ。「5つの貝殻」  1696年。
これは、見ていて、とても不思議な感じがしました。 見方によっては、シュールレアリズムの画家が描いたようにも思えて・・・。

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ウィレム・ドレスト。「バテシバ」  1654年。
旧約聖書の話を題材にとっているのだと思うのですが・・・、一人の青年が、じっとこの絵の前でたたずんでいました。
その姿が、印象的で、ぼくもその後で、見入っていました。この絵も、なぜかとても惹かれる絵でした。

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ゆっくりと、良い絵を見たあとは、いつものように秋葉に移動して、冷たいのを一杯 !!

この時間がたまりません。1月に会ったきりでしたので、近況報告からはじまり、そして今日見てきた絵の話まで。
忙しくて少し色々とたまっていましたが、久し振りに会った友達と、良い時間が持てました。

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さてと、今週も頑張ります。

"2009/03/07 Louvre "
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横山大観_生々流転:20090125 [絵画]

2009年最初の展覧会はどこに行こうかと・・・、色々と考えていました。

2月にはルーブルが来ますし(フェルメールがまた一枚来ます。絶対に2回は行こうと思っています。)、興福寺の阿修羅も東京に出張のようです(笑)。
でも、1月のうちに何かないかと・・・。

ありました。横山大観。「生々流転」。 先ずは「生々流転」というタイトルにとても惹かれました。この前の「眠れぬ真珠」の光の漂流物みたいです。それに、全長40mっていうのです @@;

色々とやることはあるのですが、全長40mの「生々流転」、みんな振り払って(笑)、東京竹橋の近代美術館へ行ってきました。

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うーーん、でも、表示は小さいですね。2番目の位置づけです。それでも、横山大観の「生々流転」すごかった!!

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図録も何もなくて、唯一 Museum Shop に絵葉書だけ、これ一種類だけ売っていました。
でも、これは前半の前半の・・・、一部分なんです。

ぼくは、結局一時間半、近代美術館にこの日はいたのですが、7枚の絵だけ見てきました。そのうちの一時間はこの絵です。40mの長巻物の「生々流転」が、同じくながーーいガラスのケースの中に展示されていたのですが、その間を3回往復してきました。

水蒸気から水が生まれて、山々に囲まれた鹿やサルが住むところで渓流となり、木々が生い茂る山の間を通ってだんだんと、大きな流れになる。
そして、大河は街を通って、海へと流れ込んでいく。8人が舟を引く傍らには、彼らが暖を取るための焚き火が・・・。この焚き火もすごいです。
そして、ここからが圧巻 !! どうやったらこんな風に描けるのかと思う渦巻き、そして龍が最後にいるのですが・・・。生々流転とは水の一生を先ずは言っているんですね。

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最初に見たときは気が付かなかったのですが、2回目の折り返しのときに気が付きました。墨の濃淡で40mの巻物の中に龍が、最後だけではなくて、この巻物自体が生々流転の水の神様なんだってことに。

ただ、順を追って見ているのではなくて、最後から1/3くらいの所から、左の方を終わりまで全部のぞいてみてください。そこには、絶対水の神様、海神? がいるのです。墨の濃淡がうねっています。

2年ぶりの全体の展示だそうです。特別展ではないのかな? でも、日曜日でも空いていましたし、これ、絶対お薦めの絵です。

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そして、この6枚もすごかった。
「生々流転」の展示室を出るところに、生々流転と共に関東大震災を逃れた作品、対比して見て下さいと書かれていたので、4階までエレベーターで昇っていきました。

近藤浩一路の「鵜飼六題」。6作で構成されていますが、これもガーーンの作品です。しばし佇む自分 !!
「浴泉」と「飛汀」が中でもとっても気に入りました。言葉では言い表せませんが、西洋絵画を学んで新聞社で漫画家だったというのも分かります。
とにかく、墨だけで書かれているとは思えません。リズムが躍動感があります。ときを感じられます。墨だけなのですが、じっと見ていると、色が自然と感じられるんです・・・。

また、すごい画家を知ってしまった !!  近藤浩一路さん。

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展覧会とても良かった。
とてもうれしかったので、帰りに近くのスーパーで安いけれど、一本のワインを買ってきて、この前HMV から届いた、アルゲリッチの8枚組みを聴きながら、まだ明るかったけれど・・・、チーズをつまみにして飲んでしまいました。 
「生々流転」・・・、近藤浩一路、とてもすごかった。
2009年最初の展覧会でした。   幸先良いかもです。 ^^

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" 2009/01/25 Seisei Ruten "
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Vilhelm Hammershoi:2008/11/15 [絵画]

どんな曲が合うのだろう・・・。

土曜日に上野の西洋美術館に行ってきてから、ずうっと考えていました。 
 
画は好きなので、自分の自由になる時間のうちのある部分は(たいした時間ではないのですけれど)、美術館にいたいんだと思います。
そして、例えばブリジストン美術館のルオーのピエロ(1925年)と話をしながら、この画にはどんな曲が似合うんだろうと思いを巡らすなど、頭の中の陣地取りをするのが好きです。

でも、
ぼくが聴いたことのある曲の中では、この日に見た画に合う曲は、これだと思います。皆さんは、どんな曲が合うと思いますか?
クラシックでも、POPSでも、JAZZでも良いけれど、やはり、大編成ではないなって思うのですが。

" Bartok String Quartet No.6 in D Major "

綺麗な旋律の曲が好きなのですが、それでも、この作曲家の弦楽四重奏を聴いた時、この不協和音の中に、すごく綺麗なものを見つけた気がしました。
突き放され、本当は不安で、不安で仕方がない。でも、その中に、ある種の静謐さがあると・・・。

そして、" Vilhelm Hammershoi The Poetry of Silence " 展に行ってきました。

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デンマークの画家である、ハンマースーホイ。北欧のフェルメールって呼ばれることもあるとか・・・。
今年は、フェル様とデルフトの画家達の展覧会も見ているので、17世紀のオランダ絵画がどんなものだったのかの予備知識はあります。

図録の表紙にもなっています。 " 室内、ストランゲーぜ30番地 " 1900年頃 63.5×54.5cm
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確かに、扉でつながったいくつかの部屋を見通すような空間の扱い方、窓から差し込むやわらかい光・・・。

" 窓辺のふたり " 1895年頃 55×46cm
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そんなところは、フェルメールやその時代のオランダの画家達の影響が、ダイレクトに感じられます。ハンマースーホイ、オランダに3回行ったことがあるようですが、かなり研究をし影響を受けているなと思いました。
良い時期に、上野で二つの展覧会が催されたなと思います。そして、両方の展覧会をフェルメール、ハンマースーホイの順番で見ることができたのもラッキーでした。
とりあえず(なぜとりあえずかは後ほど)フェルメールもハンマースーホイも静謐の画家ってイメージなんだそうですので。

" 居間に射す陽光Ⅲ" 1903年頃 54×66cm
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そして、およそ370枚の作品のうち。1/3は自分が住んでいたストランゲーぜ30番地のこの部屋の中で書かれたとのこと。
そして・・・、作品の中の人物のほとんどは、自分の奥さんのイーダ。しかも、その姿も後姿ばかり。

" フォトゥーネン近く、イェーヤスボー、デューアヘーウェン自然公園" 1901年 55×66.5cm
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ハンマースーホイ、人間としてもなかなか興味をひかれる。きっとあまり人付き合いが得意でなく、どちらかというと外にもあまり出たがらない人だったのではないかなと思います。
見ていて、きれいな景色とか色彩が素晴らしいとか、表情がかわいらしいとか、そんなことは全然感じませんでした。くすんだ白とグレーのベールで覆われたような・・・、一通り描いた後にグレーの霧を吹きかけたかのような色合い。
また、部屋そのものもそこに置かれた家具もどこか不安げで、人物も輪郭が背景に溶け込んでしまうかのようで。こういうのは無意識の不安なんでしょうか・・・。

しかし、見ていて感じるのは静けさです。
しかも、まだ自分でも理解していない心のどこかの領域を、これも何であるのかは分からないが、ざらつくような感じで触られているような、良くは分からないけれど・・・、そんな感じを通じての、そんな種類の静けさを感じます。

同じ「静謐」という言葉なのでしょうが、フェルメールの静けさとは種類が違うようです。

展覧会を見て謎だらけになりましたので、ハンマースーホイ、図録を買ってきました。
秋の夜長、バルトークの四重奏を聴きながら、どうしてそんな感じがするのか、読んでみたいと思います。

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はいっ!! 帰りは秋葉によりました。
昼間ならPCのパーツ屋さんによるのですが、

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友達と、お互いに感じたことなんかと、久し振りの近況報告などを・・・ということにして、もちろん、期間限定の一番絞りを飲んできました(笑)。 ^^v

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そして、こよい、記事をアップしながら・・・、ハンマースーホイの色彩にはウィスキーが合うようです。(笑)。

" 2008/11/15 Vilhelm Hammershoi & Akiba & Beer "
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ミレイ展:2008/10/26 [絵画]

1つ、2つ・・・、今年は8つ。

自分なりに、それなりに、よく足を運んだのかなと・・・。今年の美術館。特別展。

ただ券、貰ったのがあるので、12月までにもう一つ見に行くことになるのでしょうが・・・。
美術館って好きなんです。
特に、人のあまりいない、常設展の美術館って。建物の形まで良く分かる、あの時間が・・・。

今年の8つの中では、「コロー 光と追憶の変奏曲展 国立西洋美術館」、「ルオー大回顧展 出光美術館」、「東山魁夷展 東京国立近代美術館」、そして、比較するものなく!! b(^^)  「フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち」が、ガツン(笑)でした。

コローは、銀色のベールの森の画家っていうイメージだったのですが、この展覧会で、ほんとイメージ一新でした。コローって、こんなにバリエーションがある、美術史的に見ても、すごい画家さんだったんだなって・・・、良い意味で驚かされた展覧会でした。

そして、没後50年を記念して開催された「ルオー大回顧展」、ルオーは一番めか二番めかに好きな画家さんなんですが、この展覧会もすごかった。
連作のミセレーレと受難、すごい連作。圧巻。

生誕100年を記念しての「東山魁夷展」も、今でも感動が心に残っている展覧会。見ていて・・・、目頭が熱くなってしまって・・・。唐招提寺の障壁画に、しばし、時を忘れて、じっとかたまっていました。

それから、もうぼくの中では別格の「フェル様」!!
昨年に引き続き、フェルメールが今年も来て下さいました。
まだ、東京都美術館でやっていると思いますが、世界に37作品(諸説あって数点の違いがありますが)しかないフェルメールの作品が7点も来日しているんです。好きな順番ではそんなに高位にランク付けられる作品ではないものの、この作品数7点はすごいです。

8つ目は、ミレー展です。
最終日の3日前に母親から、招待券があるからと、ただ券を貰ったので、最終日に見に行きました。

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さすが、最終日。美術館に入るまでに、20分くらい並んで待たされました。また、入ってからも、この「オフィーリア」までは、幾重にも重なる人垣で・・・。

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確かに、この画には、何かが棲んでいます。見ていてそんな風に感じました。
ハムレットのお話の中のワンシーンなんですけれど、たくさんの花に囲まれて、静かに流されていく、オフィーリア。きれいな花に囲まれているのですが、よーーく見ると、枯れかかった葉っぱ、茶色くなった植物の茎・・・、決して綺麗なだけの絵ではありません。なんとなく、人の世の儚さみたいなものを、ひしひしと感じてしまいました。

画描かれている花には次の種類があるそうです。
スミレ(誠実・貞節・純潔・若い死)、柳(見捨てられた愛・愛の悲しみ)、パンジー(物思い・かなわぬ愛)、ノバラ(喜びと苦悩)、ミソハギ(純真な愛情・愛の悲しみ)、バラ(愛)、ケシ(死)、ヒナギク(無邪気)、ワスレナグサ(私を忘れないで) etc etc
Ophelia 1851-52年 76.2×111.8

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この画の他にも気になったものが何点かありました。

これは、マリアナ。シェークスピアの作品に基づき書かれたテニスン卿の詩を題材にして描かれたものだそうです。買ってきた図録を読むと、難破して持参金を失い許婚に捨てられ(?)堀のある屋敷に閉じ込められているが・・・、許婚のことが忘れられずにいる女性の話だそうです。そんな背景を知ってから見ると・・・、なんとなく違って見えてきました。ポーズも体の線を強調しているようです。
色々と考えなくても、とってもきれいな色彩の絵ではありますが。
Mariana 1850-51年 59.7×49.5

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ジョン・エヴァレット ・ミレイ  John Everett Millais (1829-1896) って、ラファエル前派(古典偏重の傾向に異を唱えラファエロ以前の芸術、中世や初期ルネッサンスの芸術を範とする。象徴主義の先駆的な意味も。)の画家としての認識しかなかったのですが、製作の全期間をこうやって展覧会で見せてもらうと、それだけではないのですね。
肖像画も素晴らしいし、何よりも晩年の風景画にはびっくりしました。

穏やかな天気
Halcyon Weather 1891-92年 167×88

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露にぬれたハリエニシダ
Dew-Drenched Furze 1889-90年 170.2×121.9

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「月、まさに昇りぬ、されどいまだ夜ならず」-- バイロンの詩より
'The Moon is Up,and Yet it is not Night' -- Byron 1890年 104.1×168.9

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象徴主義(ラファエル前派も)には、色使い、表情等にとても特徴があると思うのです。
生涯を通じての長い製作の期間に色々な変化を見せるミレイの画ですが、ベースには基調となるものが脈々と流れている様に思えます。作風や主題や技法は様々に変わるものの、そのベースはやはり象徴主義なんだなと・・・(これがミレイ的なんでしょうけれど)。

晩年に描かれたこれらの風景画においても、オフィーリアがそこにはいるのだなと・・・。
また、下の2枚は、この画像では良く分からないのですけれど、象徴的でもあり、印象派風でもあり・・・、特にハリエニシダの画は近くで見たのでは良く分からず、離れるとエニシダと分かるような、白色系の色が効果的に使われていて面白かった(ある種、点描みたいな描き方でした)。
単なる風景画ではなく心象風景的な・・・。自分でも大したものではないですが経験したことのある、自然と向かい合ったときに感じるそんな雰囲気をこの画を見ていて感じました。

オフィーリアはもちろんですが、ミレイの晩年のスコットランドの風景画。とても気に入りました。
展覧会は、こんな風に新しい発見をさせてくれるので、やっぱり好きです。 ^^   最終日で少し混んでいましたが、行って良かった。

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心の栄養を取った後の締めくくりは・・・、もちろん !! これです(笑)。 昼間なので一杯だけ・・・。
ビール、美味っ。 ^^v

"2008/10/26 John Everett Millais & Beer "
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