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エゴン・シーレ:日本の美術館名品展20090606 [絵画]

とても気にかかっていました。

画面の中央、ダークブルーの炎の揺らめきの中の男。
シャツの白もただの白じゃない・・・。

スニーカーの黒を際立たせアスファルトを跳ねる雨。  休みの早朝。
ブルーの傘を差し駅へと向かう濃い灰色の道。
Bartok String Quartet No.2 Op.17 を聴きながらなので、雨の音は聞こえません。どこか、ずうっと深いところの青い炎を揺さぶるチェロの音。

土曜の朝はかなりの雨でしたが、エゴン・シーレの一枚に会いたくて上野まで出かけてきました。
美術館連絡協議会(公立美術館のネットワーク)の創立25周年を記念して、それぞれの美術館の代表作を一堂に集め、7月5日まで、「日本の美術館名品展」が東京都美術館で開催されています。
202点が展示されていますが、会いたいのは、19世紀末ウィーンの画家エゴン・シーレの「カール・グリュンヴァルトの肖像」。


京浜東北線を降りると、上野駅の公園口はすごい人です。
土曜日の早朝・・・、しかも雨。であれば、なぜにこんなに混んでいるのか?
そうです、ルーヴル美術館展が6月14日までなんですね。駅の中のチケット売り場もすごい列ができていました。もちろん、西洋美術館前にも人の列。100分待ち @@; だそうです。ぼくが見に来たときは混んではいましたが、こんな待ち時間表示の看板はなかった・・・。


でも、こっちの展覧会は空いていました。ゆっくりと見ることができました。

P6070002_01-12.jpg

ボナール、ミレー、シャガール、カンディンスキー etc etc ・・・、横山大観、小磯良平、萬鉄五郎、坂本繁二郎 etc etc ・・・、有名な画家さん達の傑作揃いが202点、ざっと見るだけでも2時間はかかります。
最初は、各画ごとに出展美術館からのメッセージが付いているので、それを読んでいましたが、とても全部は読みきれません。
それに、早くエゴン・シーレに会いたいのです。画を見るのにもパワーがいるので、シーレにたどり着くまでに全部を使い切るわけには行きません(笑)。
もったいないけれど、加速して通り過ぎました。

そして、「カール・グリュンバルトの肖像」

前にフェルメールの画に会った時と同じです。この画だけ光っています。
向かって左隣はカンディンスキー。右はピカソなのですが、両巨匠の絵よりも光って見える。シーレは28歳でスペイン風邪で亡くなってしまうのですが、これはその前年の作品。

ファーストインプレッションは「きれいな画」。白と青は個人的に好きな取り合わせ。エゴン・シーレのこの画、一目で気に入ってしまいました。
シーレは自画像と若い女性を多く描いていますが、その多くは歪んでデフォルメされています。青年期特有の理由のない居場所がはっきりとしない不安・・・。多分、感受性が強く、でも精神的に非常によわい青年だったのではないでしょうか。自画像の目などを見るとそう思います。
でも、この画、シーレには珍しい男性の肖像画。
普段省かれてしまう、手や足も多少デフォルメされているものの省略せずに描かれています。

P6070011-12.jpg

しばらく、じっとこの画の前にたたずんでいました。
シーレが見ていたものが伝わってくる・・・、そんな気がしました。白いシャツを着ているのですが、たくましい肉体を筋肉を感じます。白いシャツ自体もただの白ではありません。色々な色が、感じているものが溶け込んでいる。シャツであり肉体であり人そのものなのです、きっと。
そして、その姿はダークブルーを背景として、イスに座っているのですが、イスはその背景の中に溶け込んでしまっています。この背景はダークな心の・・・、屈折しているが、でもピュアな青の炎の様に思えました。
そして、年を取った自分の中にも、こんな炎の燃えかすがまだあるのでしょうか? どこか、心の遠くの方が揺らめくのが、かるくめまいがするように感じられました。

P6070020-12.jpg

シーレと向かい合っただけでかなりのパワーを消耗してしまいましたが、さすが名品展です。
この他にも惹かれた作品がたくさんありました。

これは、岡鹿之助の「遊蝶花」

P6070006-12.jpg

同じく岡鹿之助「信号台」。

岡鹿之助も気になっている画家の一人です。ブリヂストン美術館で展覧会があったのですが、見逃していました。ここで2作品を見ましたが、展覧会行けばよかった。

特にこの「信号台」を見ていてそう思いました。静かな光景ですが・・・、ルソーの絵を見た時のような懐かしさ抒情性を感じます。

P6070008-12.jpg

そして、これも気になる画家、佐伯雄三の「サンタンヌ教会」。
佐伯雄三も確か30歳くらいで結核で亡くなったのだと思いますが、この作品はいいなぁ・・・。
ユトリロの作品も展示されていました。同じようなパリの町並みを描いているのですが、こちらの作品の方が、ずうっと心を揺さぶられます。

昔は結核は不治の病なんですよね。
死というものをすごく身近に感じて、本来長い生涯の間に使うべきパワーを、残された短い間に全て使い切ってしまおうかとするように・・・。ろうそくが消えそうな時、一時的にパワーが強くなるような・・・、そんなものを・・・。
黒い輪郭線と、レンガ色がとても効いています。

ぼくもかなり前ですが、結核にかかったことがあります(昔でなくて良かった・・・)。でも、病気にかかった時、生命力が反比例的に強まるときがあったのを覚えています。

P6070014-12.jpg

かなりの情報量がある展覧会でした。もう少し、パワーがある時に見た方が良かったのかもしれません。少し、くたびれました。

でも、エゴン・シーレ・・・、素敵でした。
また一人、気になる画家が増えました。ウィーンに行ってたくさん見てみたいのですが・・・ハハハハハハッ・・・ハ ^^;


多分じぶんのブログ、しばらく休止しているような、でも時々は顔を出すような・・・、そんなことになりそうです。写真も、しばらくお休み・・・かもしれません。

" 2009/06/06 Egon Schiele "
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クララ

moz
無理しないで。
by クララ (2009-06-07 19:38) 

ナビパ

お忙しくなるのですね。
あまり無理せずにですね。
by ナビパ (2009-06-07 19:56) 

Bon-Papa

確かに素敵な絵ですね! この目で拝見したいけど 遠いなぁ^^

by Bon-Papa (2009-06-07 20:44) 

みかっち

お互い様です! ずっと、つながっていますからね♪
by みかっち (2009-06-07 21:40) 

ララアント

おはようございます。
mozさんからの若い素晴らしい感性で発せられる情報
(音楽 絵画 横浜 鎌倉 書物 etc)を楽しみにしてきました。
私も 義母の件で 少し 「疲れて」います。
mozさんワールドは楽しみにしていますが 無理をなさらないで
ください。
by ララアント (2009-06-08 08:00) 

Far-East

私は前日金曜日の夜、国立博物館に行ったんです。
あの評判の・・・。明日にはアップできるかどうか・・。
絵画も好きですがなかなか行く機会がありません。
by Far-East (2009-06-08 11:37) 

pastel

1枚の絵を見て、これだけのことを心で感じ取れるmozさんって
やっぱり研ぎ澄まされた感性をお持ちなんだなぁと思います♪
ブログは無理なさらないで下さい。私もすっかりスローペースに
なっちゃいましたから^^;
by pastel (2009-06-08 17:57) 

麗夢睡眠

シーレ素敵ですね♪
私は個人的にはミレーが好きなんですが、大観も捨てがたい…
近ければ是非見に行きたいですね~~(^-^)
by 麗夢睡眠 (2009-06-09 00:40) 

ももこ

mozは情報通ですね、私が知らな過ぎるんでしょうが、
昨日上野に出るよう用事があり絵画展とか思いましたが
久しぶりに小ホールで若いアーテストのチェロソナタの当日券購入して
大好きなベートーヴェンチェロソナタ3番聴いて来ました、
帰ってからmozのブログ見ておいたらと後悔仕切りです。
善は急げ!(^^)!明日行こうかな(^^♪

お仕事お忙しい年代ですものね、これは昇進したってことだね、
moz過労にならないように頑張れ!アルコールはほどほどにね。
by ももこ (2009-06-09 01:32) 

はくちゃん

こんにちは
たまには美術館も行ってみたくなりました
ブログ ご無理なさらず 息抜きに。。。

by はくちゃん (2009-06-09 13:15) 

GRACE

更新されたら来ますから、更新したい時だけ^^で。
by GRACE (2009-06-10 07:30) 

marilyn

おはようございます。無理は禁物(*^_^*)
人のことは気にしないで、自分が更新したいときだけ、更新してください!
ちゃんと、mozさんのことは、みんな忘れないですよ~☆彡
by marilyn (2009-06-10 08:45) 

リュカ

シーレに会いに行ったのですね^^
本当にこの絵の男性、肉体を感じますね。
岡鹿之助「信号台」、この絵すごく好きです。
岡鹿之助って知りませんでした。この人の絵、もっといろいろ見てみたいな。

ブログは自分のもの。
自分のペースでつきあっていくのが良いと思いますよ♪
体には気をつけてくださいね。

by リュカ (2009-06-10 20:43) 

komame

会いたくなったときに、会いにくれば(行けば)いいのですよ^^
エネルギー、ゆっくり、ゆっくりためてくださいね^^
by komame (2009-06-10 23:34) 

hidens

私も、忙しいときは全くブログを更新できません。でも続けて更新できるときもあったりします。ゆっくり行きましょう♪

mozさんの取り上げてくださった画がなんともいい雰囲気があります。
絵画はあまりにも高尚すぎて、自分には追いつけない部分がありました。
mozさんの色彩のセンスというか、共通点があるように感じます。絵画たちはすごく暖かい色あいのものばかりで、人など、生身の人間らしさを感じますね。
by hidens (2009-06-11 07:41) 

mwainfo

ためしてガッテンで、スロージョギングというのを紹介していましたが、しばらくは、「戦士の休息」と行きますか。
by mwainfo (2009-06-11 09:48) 

sunset

こんばんは。
素晴らしい展覧会みたいですね~
機会があったら行ってみたいです。
ブログは御自分のペースでゆっくりと
続けてくださいね^^
by sunset (2009-06-11 22:48) 

ひろころ

シーレ、初めて知りました。
と言うより、きっと見逃していたのだと思います(苦笑) 独特の作風ですね。
クリムトは好きなので、ウィーンでも見に行きましたよ。
佐伯祐三は、大好きな画家の一人です。
彼の描いたパリの町は、あの時代独特の退廃した空気がちゃんと伝わって来る。
そして、彼自身の葛藤がそのまま絵に写し出されていてぞくっとしますね。
あ、ちなみにユトリロも好きですけどね(^^*)
by ひろころ (2009-06-12 13:43) 

moz

クララ、ありがと。。。。
新しい環境とペースに慣れればって思います。
聴いている曲も良くないのかなぁ~・・・ ^^;
by moz (2009-06-13 05:41) 

moz

ナビバさん、キャパシティの少ない人間なので、二つ同時にできなくて・・・(笑)。
ありがとうございます。 ^^
by moz (2009-06-13 05:45) 

moz

Bon-Papaさん、ねっ、素敵な画でしょ ♪
ポスターを見て一目ぼれしてしまいました。
白いシャツとダークブルーの背景がとても印象的 !!
確か豊田市美術館蔵だと思いました。機会があれば、ぜひぜひ ^^
by moz (2009-06-13 05:47) 

moz

みかっちさん、そうですね !! ゆるゆるでーーっ、ていうと、ぐうたらな、自分は糸の切れた凧になる危険が(笑)。

by moz (2009-06-13 06:00) 

moz

ララアントさん、おはようございます。
お義母さま、その後、お加減いかがでしょうか。大分良くなられたということ、一安心です。ララアントさんもさぞお疲れのことと思います。十分にお体、休ませて上げてください。
心のパワーがなくなっているんだと思います。他のところに使ってしまってかな??
色々なことに感動がなくなっているような・・・。
写真もそんな感じです。
ご心配掛けてすいません。元気は元気なので・・・ ^^
by moz (2009-06-13 06:06) 

moz

Far-Eastさん、記事読ませていただきました。また、ゆっくりご訪問させていただきます。ぼくは見そびれてしまいました。機会があれば奈良に行ってって思っていますが・・・ ^^;
画は良いですよ。自分のペースで自分流に話をしてくることができますので。
by moz (2009-06-13 06:08) 

moz

pastelさん、いえいえ、勝手に思ったことなので・・・、公式見解は?ちょっと違っているのかもしれません。でも、バックのダークブルー、気になるんです(笑)。
シーレの他の画は人によっては目を背けてしまうかもしれません。でも、醜悪さとの狭間に何かがあるんです。って思うのです。気になる・・・何かがっ ^^;
そうですね。無理せずいきます。

by moz (2009-06-13 06:12) 

moz

麗夢睡眠さん、いいでしょ ♪
この画、なんとなく惹かれるんですよ。むかーーし、抱いていた、自分の中にもあった何か・・・、そんなものがここにはあるような、そんな感じがします。
ダークブルーのバックを見ていると、その燃えカスが・・・、共鳴するような気がして、軽くめまいなんかが・・・(笑)。
ミレーも良いですね。大観はぼくも大好き !!
空間の表現が大観は素晴らしいと思います。
by moz (2009-06-13 06:15) 

moz

ももさん、絵画も良いですが、べトのチェロソナタなんて・・・うらやましい・・・(笑)。
いえいえ、ももさんこそ、情報通でいらっしゃいます。ぼくのは、興味のあるものだけの情報なので。
でも、機会があれば、シーレ、ご覧になって下さい。
色々と真剣に考えていたあの頃のことをなんとなく思い出します。

はははっ、アルコールは心の友ですーーーっ !!
by moz (2009-06-13 06:18) 

moz

はくちゃん、おはようございます。
たまには、静かな美術館も良いですよ(特別展は混んでますけど)。
静かな美術館好きです。 ^^
はい、無理せず(っていうか書きたくなったらかな?)ゆるゆると行きます。 
by moz (2009-06-13 06:20) 

moz

GRACEさん、mがとれておめでとうございます(笑)。
ありがとうございます。
これからも、宜しく m(__)m
by moz (2009-06-13 06:21) 

moz

marilynさん、おはようございます。
ありがとうございます。そうですね。無理は禁物、背伸びはもっと禁物。書きたい時だけ書くことにします。 ^^

忘れないでくださいね(笑)。
by moz (2009-06-13 06:22) 

moz

リュカさん、行ってきました。気になっていたシーレに会いに !!
見ての印象は、とってもきれいな画ってことでした。ポスターとは全然違います。
丁寧に書いていますよこの画。
やっぱり、岡さんお好きでしょ。見ていて、きっとリュカさん、この画好きだろうなって思いました(笑)。静かだけれど、懐かしくて、ずっと見ていたい、そんな画ですよね。目黒区美術館蔵ですって !!
ありがとうございます。ゆるゆると、行きます。
by moz (2009-06-13 06:28) 

moz

komameさん、そうですね。会いたいときに伺うことにします ^^
少し、食べる量、増やそうかな(笑)。
by moz (2009-06-13 06:29) 

moz

hidensさん、そうですね。ゆっくりと行きます。書きたくなったら書くことに・・・いつかは分かりませんが・・・(笑)。

画って高尚ですか? 自分にとってはマイペースで付き合えるので(色んなこと判ってなくてもそれはそれで)、とても身近な存在です。 ^^
シーレも岡さんも佐伯も、とても素敵でした。
共通点なんて・・・、でも、写真にも通じるところありますよね。糧にできる方もいるんでしょうね。
by moz (2009-06-13 06:34) 

moz

mwainfoさん、そんな格好の良いものじゃないですが・・・、スロージョギングは良いかもしれませんね。
参考にさせていただきます。 ^^
by moz (2009-06-13 06:56) 

moz

sunsetさん、おはようございます。
公立の美術館もなかなかやるぞって、感じです。できたら、その他の、日本全体の美術館展なんてやってもらえたら、もっと素敵だと思うのですが。
はい、ありがとうございます。ゆるゆると ^^v
by moz (2009-06-13 06:57) 

moz

ひろころさん、そうですね。クリムトと同じ頃に活躍した画家だと思うのですが、どうしてもクリムトの影になってしまいますよね。ぜんぜん作風が違います。クリムトも好きですが、この画にはなんとなく惹かれるんです。ウイーンは美術史美術館しかいけませんでした。
やっぱり佐伯祐三お好きですか。すごく気になる画家さんです。まとめて見たいなぁ~。どうして、みんな若くてなくなってしまったんでしょう。命を最大限に燃やしてしまったんでしょうか?でも、作品は素敵ですよね。
ユトリロも・・・、嫌いではないのですが・・・(笑)。
by moz (2009-06-13 07:03) 

こうちゃん

僕も最近は、サボリ癖がついています。
blog、思った以上にパワーがいりますよね。
by こうちゃん (2009-06-13 21:15) 

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