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沼田まほかる_ユリゴコロ:20140112 [好きな本]

正月休み、終わってしまえば、あっという間の9連休。 ^^;

もっと休みたかった、お餅も食べ足りないし、ミカンもそんなにむいていない、何より八幡宮へ初詣に行っていない。
休み足りない等と思っていましたが、すぐにこの3連休が来てくれました。

今回、9連休と長かった年末年始休みでしたが、じぶんならまだまだ休めます。一か月くらい仕事しないで、ゆっくりとしたい。
もっとも、会社の机がなくなるおそれがありますが・・・。

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この3連休、ゆっくりしようと思って、昨日、近くのお店が開くのと同時に出かけて、書店で本を2冊、成城石井さんで赤ワインを1本買ってきました。

「ウバールの悪魔 シグマフォースシリーズ」 ジェームズ・ロリンズ著 竹書房文庫
「ユリゴコロ」 沼田まほかる著 双葉文庫

先ず読んだのは、もうずいぶん前なのに、文章に独特な時間の流れ、それに夕方の薄いオレンジ色の中に黒々とした血が混じったような色を感じました・・・、記憶に鮮明に残っている「猫鳴り」の著者である、沼田さんの作品、「ユリゴコロ」。

50代から書き始めた遅咲きの小説家、沼田まほかるさん。現在は奈良県にお住まいなんですね。
読書後には決して気持ちが安らぐのではなく、かえってざらっとした感触、でもそれでいてじーんと強い感動が心の奥底に余韻として残りました。それ以来忘れることのなかった作家さんの、じぶんにとって2作目。

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部屋のビールの空き缶をスーパーのレジ袋に突っ込み、散らかったCD と読み終えた文庫本を元あった場所に片付けて、読書の前の整理整頓は儀式。

CD はギュンター・ヴァントの Bruckner の交響曲集にしました。
9枚組の9枚目から順番に聴き始めます。
ブルックナー交響曲8番ハ短調から、順番にさかのぼって聴いていきます(9番は8枚目)。時間はたっぷりだから、全曲聴いてしまうつもりでした。

学生の頃はよくマーラーと一緒にアントン・ブルックナーを聴いていました。重厚な迫力のある音楽が好きで、
金管楽器群が咆哮し鳴り響く交響曲達は、大音量で聴くとスカッとしました。正にオーケストラの醍醐味 ♪

でも、最近はパイプオルガンのような重低音、アルプスの山々のように聳え立つ音たちが少し重たくて、じっくりとは聴けなくなっていました。

それが長く休んだおかげでしょうか、ブルックナーが聴きたくなったようです。心ののりしろ・・・余裕は必要ですね。
まほかるさんの作品にはもう少し違う曲が合うのかもしれませんが、久々のブルックナーの8番も良いな。ヴァントの指揮ケルン放送交響楽団の演奏、割とスマートです。

これならブルックナー、仕事がはじまっても聴けると思います。

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「ユリゴコロ」

奈良でドッグランのある喫茶店を経営している亮平。ある日、末期癌の宣告を受けている父の家を訪れる。父が不在な家の押し入れの中から、古びたノートを4冊と白いバック、そして遺髪を見つけ、何気なくノートを読むと、そこに淡々と綴られていたのは・・・、現実のものとは思えないいくつかの殺人のカミングアウト。
これを書いたのは誰? 実際の話? それとも亮平の父が書いたフィクション?

父の不在時にこっそりと通って読み続けていくと、子供の頃の薄れた母の記憶、母は2人?
禁じられた遊びのような出来事から始まるオカルトチックな前半と、車の中での殺人が起こるミステリーのような後半。亮平の出生の秘密、最愛の恋人の千絵のトラブルなどが織り交ざって話は進んでいく。

確かに殺人が何度も起こり、末期癌、母の交通事故、DV、etc etc・・・。残酷で描写もグロイ感じの世界。

読んでいて、最後まですっきりする訳でもなく・・・。
ただ、「猫鳴り」のように、余韻はすごく残りました。じーーん。やっぱり、あの人が・・・良かった、亮平良かったね。

本の最後、亮平にとって大切な人と父が車で旅に出かける別れのシーンでは(親子が会うのはこれが最期)、8番の3楽章Adagio をもう一度。ブルックナーのAdagio もきれいな曲だなぁ~。
このシーンに、結構合っているかもしれない。

ぼくには読んだ本と音楽が結びついているものがいくつかあります。読んでいるときにいつも音楽を流しているので、その本と聴いていた曲が結びついているものが。

レミオの「夢の蕾」と石田さんの「美丘」、ボン・ジョビの「Have A Nice Day」と春樹さんの「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」 etc etc ・・・。
この本とBruckner No.8 Adagio もそうなるかもしれません。

家族の絆、人間の弱さと最後の最後での強さ、何より人を思う心・・・。人を動かすのは、人を変えるのは・・・人の心なのですね。真心・・・。強く愛するこころ・・・。

なぜかはまだ良くは分からないのですが、まほかるさんに、また惹かれてしまいました。

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前半のところでは、春樹さんのようだと思えるくらいの、ダークなものへの執着心を感じましたし、オカルト宗教的・・・変質的で独特な暗い穴のイメージが、通奏低音のように常にイメージされ、脳裏から離れませんでした。
話の続きが気になって、一気に、ブルックナーの交響曲全集を全曲聴く前に、CD 5枚目で読み終えてしまいました。こんなに集中して読んだのも久しぶりです。
ワインも、まだ少しだけ残っていて、これから残りを飲みます 笑

爽やかではなかったけれど、この作品も心に残るでしょう、とても面白かった。
まほかるさんの本、まだ何冊か出ているようなので、これから買いに行こうと思います。

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" 2014/01/12 Yurigokoro & Bruckner Symphony No.8 Adagio "
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