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三菱一号館美術館ヴァロットン展:20140809 [絵画]

3月にビアズリーを唯美主義展で見て、

バルテュス展を4月に見て以来、美術展には行っていませんでした。

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友達と展覧会に行こうと約束をしていたのですが、友達のお母さんの具合が悪くしばらく行けそうにありません。

高校生の頃から色々とお世話になったお母さんです。

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一緒に行けるようになるまで、展覧会はやめようと思っていたのですが、そんなことはしないで行っての一言。

こだわるのもかえって良くないなと思い、今年3つ目の展覧会に出かけてきました。

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10時の開館時間に合わせ、

いえ、それよりも少し早めに家を出ました。

三菱一号館美術館がある東京丸の内近辺、休みの朝の感じはとても素敵です。

東京駅がすぐそばにあるとは思えない、静かで落ち着いた雰囲気、柔らかい優しい木漏れ日の似合うところ。

美術館に入る前に相棒の520を連れて30分ばかり散歩をしてしまいました。

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フェリックス・ヴァロットン(1865年~1925年)、
スイス出身、パリで創作活動を続けたナビ派に属する画家。ヴァロットン展、初めて見る絵画たちでした。
今年はバルテュスと言い、はじめての出会いの画家が多いです。

ヴァロットン展に行こうと思ったきっかけは、この≪ボール≫をポスターで見たから。
小さな少女が赤いボールを追いかけていて、とても可愛いなと思い実際の画を見てみたいと思いました。

確かに実物は可愛いと思ったのですが、

≪ボール≫ 1899年 オルセー美術館
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良く見てみると少女が追いかけている赤いボールの他に、左下の方に褐色のボール? がもう一つあるのを見つけました。

あれっ? どうしてボールが2つあるの?

そう思って改めて画を見始めると、可愛かった画が違って見えるようになりました。
時間とかパースペクティヴとかが一定でない感じです。
どこかゆがんだ感がして、これは単に可愛いと見る画ではないのかもしれない、ヴァロットンってそういう画家ではないなと思いました。


≪夕食、ランプ≫の一部分ですが、結婚したガブリエルと連れ子達とヴァロットンの食事の光景。ヴァロットン自身は手前に大きなシルエットとして描かれていて、正面に向かい合っているのは女の子。

ぱっちりと目は大きく開かれているのですが、何を見ているのでしょう? 虚ろな感じ?

食事を楽しんでいるようにも寛いでいるようにも見えません。

≪夕食、ランプの光≫ 1899年 オルセー美術館
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コの字型のソファで帽子をかぶりコートを着たまま、二人の男性と向い合っているシュザンヌは、娼婦だそうです。

≪貞節なシュザンヌ≫の飾られているところから、前の展示室の≪夕食、ランプの光≫の少女が、黒い目が見えました。

ぼくが見ているのではなくて・・・、

2枚の画から見られているような不思議な感じがしました。

≪貞節なシュザンヌ≫ 1922年 ローザンヌ州立美術館
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この頃の西洋の画家達の多くが影響を受けたように、ヴァロットンも日本絵画の影響を受けていたようです。

自信、浮世絵も何点か所蔵していたようで、今回それも展示されていました。画かれた画の中にも浮世絵が作中画として登場したりしています。

≪残照≫ 1911年 カンベール美術館
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肖像画、裸婦、静物画 etc etc ・・・、色々なジャンルの画が展示されていましたが、ヴァロットンの風景画も気に入りました。

上の≪残照≫は象徴主義の絵画のように思えます。 なぜだか惹かれてしばらく前にたたずんでいました。

きっとヴァロットンの風景画は見たままを画くのではなくて、一度心で咀嚼してそれから書き始めるのでしょう。

思いっきりデフォルメした木々は彼の得意な版画にも通じているように思えます。

≪カーニャの俯瞰的眺望≫は構図と言い色彩と言い、日本画の様でした。
ジャポニズムってある意味すごい。こんなにも影響を与えているのですね。

≪カーニュの俯瞰的眺望≫ 1921年 ローザンヌ州立美術館
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裸婦もヴァロットンの作品の中で数多く画かれたものだそうです。実際今回の展覧会でも、多くの裸婦の作品が展示されていました。

どれも特色のある作品ですが、アングルの画いた裸婦に質感も肌の画き方も etc etc ・・・良く似ています。

≪休息≫ 1911年 シカゴ美術館
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それもそのはず、ヴァロットンはアングルの裸婦を見てとても衝撃を受けたとのことです。この画、≪トルコ風呂≫もアングルの系譜をたどることができる感じです。もっともアングルのような異国趣味もないし女性の官能的な色気も感じられませんけれど。

犬がいたり、左手の女性は手拭のような模様のタオル?を持っていたり、外反母趾のような脚の女性もいたり 笑。

≪トルコ風呂≫ 1907年 ジュネーヴ美術・歴史美術館
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それにしても、どこかよそよそしさを感じる女性たち・・・。

ヴァロットンは裸婦を画く時、デッサンだけして、後はモデルなしにアトリエで画いていったようです。
また、時にはモデルもいなくて裸婦の写真をもとに画いていったとか。

そんなことも影響しているのかもしれませんが、裸婦画であるにもかかわらず、冷静でどこか冷めた感じがする女性たち。

裸婦画、男性にとっては最も美しくて、神秘的なカーヴ、究極の曲線です。そんなに冷静には画けないとは思うのですが?

≪赤い絨毯に横たわる裸婦≫ 1909年 プティ・パレ美術館
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ヴァロットンは若い頃、版画家として登場したのだそうです。

今回の展覧会の一つの目玉として、三菱一号館美術館が所蔵するヴァロットンの版画コレクションが展示されていました。 これだけシリーズものがちゃんと揃ったコレクションはないとのこと。

じぶんは版画というと、ビアズリーが好きなのですが、ヴァロットンの版画を見て、これもすごいなぁ~と思いました。

白と黒。大胆で、風刺がきいていて動きもすごく感じます。

≪学生たちのデモ行進 <息づく街パリ>Ⅴ≫ 1893年 三菱一号館美術館
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アングル、フレーミングアウト、デフォルメされたフォルム etc etc ・・・、素晴らしい。

≪街頭デモ≫ 1893年 三菱一号館美術館
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絵画とはすこし違うヴァロットンがここにはいました。

≪突風≫ 1894年 三菱一号館美術館
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今年3つ目の展覧会、いつもの年よりもずっと回数は少ないですが、ゆっくりと初めてのヴァロットンの絵たちと会うことができました。


美術館の中はとてもひんやりしていて、長くいると半袖一枚では寒くなるほどでした。展示室の入り口にはショールが置かれていて「ご自由にお使いください」との用意もあるほど。

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外に出て歩いていても、しばらくは暑さを感じませんでした。 ^^;

本当に暑い夏です。 そして、まだまだ続きそうです。

かき氷やスイカを食べるのも良いですが、三菱一号館美術館で冷え冷え~ !! になるのも良いかもしれません 笑

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フェリックス・ヴァロットン、

はじめて見た画家でしたが、≪ボール≫を見て気付いた様に、見終わってみるととても不思議さを感じる画家でした。

ナビ派の絵画はいくつか見たことがあり、その中には暖かさを感じるものがたくさんありました。でも、ヴァロットンの絵画は暖色系の色彩を使っていても決して暖かみを感じません。

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何かな? 不安感?

黒くてもやもやしたもの、
春樹さんの小説に登場してくる、どこか違う世界から不可思議な穴を通って暗闇から現れる小人や形の定かでない怪物のようなものたち、そんなものが静かに息をひそめどこかに隠れているかのような・・・。

生きているだけで不安になるような何か。 明日への不安、存在することさえの不安・・・。

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また、ヴァロットンの作品には女性がたくさん画かれていますが、

手放しで可愛いとか、 綺麗とか、

または色っぽいとか、エロスを感じるとか、

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そんな女性は感じられませんでした。

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潜在意識の中に人に対する不安感があるのかな?

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女性に対しての不安感なのかな?

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資産家の娘である3人の子連れのガブリエルとの結婚生活はどんなものだったのでしょう?

幸せだったのかな ? ヴァロットン。

どうして、前の恋人と別れたのかな?

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ヴァロットンの画、不思議でよく分からなくて、今ももやもやしています。

見たらよけいに分からなくなって、底なし沼に脚を踏み入れたかのようです。

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バルテュスを見た時もそうでしたが、良き時代の絵画たちとは違って、現代に近づくにつれて複雑になって、違う視点を持たないと絵画たちと話ができないのかもしれません。

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美はやはり色々なものが混じり合っているのかな。

バルテュスとかヴァロットンとか、これらを十分に鑑賞するには、画と一枚一枚話をするには、感性を磨くこと、色々なものを見たり聴いたり知識を得たりすることも大切なことなのだと、改めて思いました。

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今年も早、折り返し点を過ぎてしまいましたが、季節は秋と冬に向かっていきます。芸術鑑賞の季節ももうすぐです。

これからはコンサートだけではなくて、もう少し展覧会へも足を運びたいと思います。

友達とも、また一緒に展覧会に行って、帰りに美味しいビールを頂きたいです。 ^^v

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ヴァロットン展を見た後、ブリックスクエァのエシレで久しぶりにクロワッサンを買ってきました。

午前中ならまだ売り切れていません。 

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ここのクロワッサン、やはり美味しいです。 

心の栄養と一緒に、やはり体にも栄養。 ^^


展覧会のことと東京丸の内界隈の優しい光たちの余韻に浸りながら、そして、少し消化不良のヴァロットンの画のこと
もう一度考えながら、ワインとチーズと一緒に頂きました。

謎が深まるのはますますいい? 笑

" 2014/08/02 Mitsubishi 1gokan Museum Valloton "

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