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東京都美術館バルテュス展:20140420 [絵画]

じぶんだけの感覚かもしれませんが、綺麗と美とは違うかな、特に芸術に関して。

綺麗は形が整い、見ていると心地よさを感じるもの。

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美はもっと複雑で、
色々なものがごちゃごちゃに混じり合っている感情のカオス、
心地よさも、ときめきも、静けさも、暖かさも、それだけではなくて、醜さや忌み嫌うべきものも、不安も、恐れもetc etc・・・が混じり合っている中から、
ごく一握りの特別に選ばれた人によって、それが必然であるかのように抽出されたもの。

それが結実した作品には美が宿っています。

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アーティストが内面的必然性によって抽出した作品と出会うと、じぶんたちは作品に宿ったそれらを感じることになりますが、たぶん綺麗という感情の幅はそれ程は大きくないと思うのですが、美の方はかなり広い。

ある人は美しいと感じるものも、ある人はただ不安を感じるものでしかないなどということも。

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前置きが長くなってしまいましたが、
4月20日(日)、東京都立美術館で開催中の(6月22日迄)バルテュス展に行ってきました。

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初日マニアの自分としては初日である19日に行きたかったのですが、土曜日は用事があってどうしても行けず、二日目の
20日になったもの。

展覧会が始ったばかりだったからでしょうか?  
開館9時半に合わせていきましたが、写真の通りとても空いていて、リュカさんに教えて頂いてから楽しみにしていたバルテュスの作品たちに、ゆっくりと会ってくることができました。

≪夢見るテレーズ 1938年 150×130 メトロポリタン美術館≫
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1908年生まれで2001年に亡くなったバルテュス、かのピカソに「20世紀最後の巨匠」と評されたそうですが、ピカソのように、作品は同じ画家が描いたものなのかな? と思うほど画風にはバリエーションが多いと思いました。

≪決して来ない時 1949年 97.7×84.4 フランシス・リーマン・レープ・アート・センター≫
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その中でも主題というか扱われている多くの物は、駅貼りのポスター≪夢見るテレーズ≫の中にもに画かれている少女と猫。

特に少女は、バルテュスが生涯最も関心を持ったモチーフ。それは、絵画的にも私的にもそうであったようです。

≪美しい日々 1944年-1946年 148×199 ハーシュホーン博物館と彫刻の庭≫
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シャシー時代のモデルであり同居していた義理の姪のフレデリック、後に結婚する出井節子さん、ともにバルテュスとは30歳ほど離れていて、親子くらいの年の差です。

義理の姪と二人っきりで住んでいたことも、肩がはだけて胸があらわになった、または脚を無防備に開いた大人でない少女を描くことも、タブーを犯すようなスキャンダラスなことだったんだろうと思います。

なぜ、バルテュス?


この絵はとても印象に残りました。斉藤真一の津軽じょんがら節のポスター等、瞽女を思い出しました。
≪朱色の机と日本の女 1967年-1976年 145×192 ニューヨーク、ブレント・R・ハリス・コレクション≫
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展覧会を見てきて、なんだかすっきりしませんでした。

良かったのか? そうではなかったのか? こころの奥底をざらっとした感触のするものでなでられたようにも、何か今まで感じたことのない光るものを見たような感じにも思えていました。


そんな中で、「すとん」と良い絵だなと胸に収まったのは、シャシー時代の風景画たち。

明るくて広がりがあって素敵な絵たちです。前景のうわっと指を伸ばしたような? 木が良いですね。

≪樹のある大きな風景(シャシーの農家の中庭) 1960年 130.5×162 パリ、ポンピドゥー・センター、国立近代美術館≫
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それからこの肖像画もとても良かったです。

画家アンリ・マチスの孫娘のジャクリーンを描いた肖像画。マルセル・デュシャン夫人が購入したものだとか。

全体のブルーの色彩、ジャクリーヌがとっても可愛いです。

≪ジャクリーヌ・マティスの肖像 1947年 100×80.6 個人蔵≫
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空いていてゆっくりと鑑賞することがてきました。

でも、なぜ バルテュス? と思っていて、ブログにも書くことができませんでした。

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テレビでも2つのバルテュスの番組を見ました。

BSプレミアム「バルテュスと彼女たちの関係」
日曜美術館「バルテュス 5つのアトリエ」

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図録でも読み、二つの番組を見ることで、バルテュスの人となり、人生等を展覧会の時よりも良く知ることができました。

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6月7日(土)からは、三菱一号館美術館で「バルテュス 最後の写真―密室の対話」展が開催されます。
バルテュスは、晩年に手の自由がきかなくなると、絵筆をポラロイドカメラに持ち替えて、デッサンに代えてモデルを撮影したとのこと。遺作を画くために撮られた写真も含み、日本で最初の公開なのだそうです。

気になって仕方のないバルテュス、こちらも是非、見に行かねばと思っています。

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少女から大人の女性へと変る一瞬の刹那の光。

光を愛し、死ぬまで、アトリエに差し込む光にまでこだわったバルテュス。

外光と共に、終生追い続けた少女の体内から発せられる一瞬の刹那の光。

バルテュスのような絵画と向かった時、タブーとか倫理とかコモンセンスとか、そういうものは忘れ去って、
純粋にただ純粋に絵と向き合わなければ、その美には会うことができないのだなと、なんとなくですが少しだけ自分なりに思えるようになってきました。

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人間には、男と女がいます。

村上春樹さんの「女のいない男たち」を読んだ時にも思いましたが、女性の方はバルテュスの作品を見られて、どう思われるのでしょう?

少女から大人になる時の刹那の美・・・って、男性には分かる気がするのです。
我が国にも源氏物語の紫の上みたいなこともあります。

ぼくら男性と同じように女性の皆さんもバルテュスの作品を見るとき思うのでしょうか?


この一週間ほど、喉が痛くて鼻もおかしく、気が付くと高熱を出していました。久しぶりに会社も休みました。
フーフー言っていましたが、少し熱がひけば色々と考えるには良い時間。まとめて何冊か本も読みました。

アルコールも久しぶりに一週間近く抜けたし、体重も3kgほど減です。

たまには、熱を出すのも良いかも (笑)

" 2014/04/20 Retrospective Balthus "
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