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ターナー展に行ってきました:20131027 [絵画]

少し前まで暑い暑いと言っていたのに、いつの間にかカレンダーは11月。気が付けば毛糸の暖かさが心地よくなっています。

年をとるにつれ、加速度的に早くなる時の流れに、最近少し焦ったりも。

一日一日の日々を、時というリソースを大切にしないといけないな。

朝のコーヒーを飲みながら、そんなことを考えている11月の土曜日、横浜は、小雨。部屋の中も寒い。

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写真を撮りに出かけようと思っていましたが、天気が良いとは言えないし、日帰りの出張が重なって少し疲れ気味なので、
ラフマニノフの交響曲2番 。

昔から名演との評判の高い、アンドレ・プレヴィンのCD を買いました。「船に乗れ」を読んだ時から大好きになった第3楽章 Adagio を聴きながら、先日行ってきたターナー展の図録を眺めます。
色と光の錬金術師の素晴らしい絵、そして、きれいな、ほんとにきれいな Adagio の旋律・・・。
仕事のことでいっぱいになっていた頭にもさわやかな風を運んでくれるよう。

ブログには書けなかったものもありますが、兵庫県立美術館も初めて行ったし(クラーク美術館展を見ました)、今年も割とたくさんの絵たちに会うことができました。

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その中でも年の初めから楽しみにしていたターナー。

もう、20年以上も前になりますが、西洋美術館で一度ターナー展を見ました。
知的好奇心を掻き立てられ、抒情的な風景画に心を揺さぶられて、多様性が不思議で頭の中で陣地取り・・・、理解の範疇を超えていて、そして良くは分からないのだけれど、とても好きになった画家。

四半世紀ぶりにまとまって見られると思うと・・・指折りその日を待ちわびていましたが、10月27日、季節外れの台風が去った次の日、東京都美術館に会いに行ってきました。

≪月光、ミルバンクより眺めた習作≫
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どの絵も素敵です。
そして、どの絵が良いのか・・・一枚選ぶとしたら、とても困る画家。今回の展覧会には、画家10代の作品から歿後発見された作品まで、全部で140点の作品が来ていますが、そのどれもがターナーだなと思いました。

全てが素晴らしくて、全てが面白い。

≪バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨≫
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基本的に作品は風景画なのですが、ターナーの絵は、単なる風景画ではないと思います。

≪レグルス≫
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自然の崇高さ、気高さ、脅威、畏怖、絶対的大きさ、静けさ、美しさ、それから・・・移ろい・・・etc etc ・・・。

≪平和-水葬≫
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ジョセフ・マロード・ウイリアム・ターナー

それらを目から情報として取り入れ、心の内面でろ過して、絵画という手段で結実する。

自然を見て、聴いて、体全体で感じて・・・そうせざるを得ない、内面的必然性。

≪湖に沈む夕陽≫
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印象派、象徴主義、ロマン派、モダニズム。

それらをすべて包含する絵画。

ターナーも、時を超越した、選ばれた芸術家なのだなと、今回の「ターナー展」を見て、そう思いました。

神は時々その気まぐれのせいなのでしょうか?  ミューズの御使いとして、この世に選んだ使いをお遣わしになります。
僕らは、Mozart 、 Vermeer、Leonardo da Vinci etc etc・・・それら御使いたちの作品を通して、天上の究極美に断片なのかもしれないけれど、触れることができるのだと思います。

一枚を選ぶことは難しいのですが、今回特に気に入ったのは≪月光、ミルバンクより眺めた習作≫、
≪バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨≫、≪レグルス≫、≪平和-水葬≫、
そして≪湖に沈む夕陽≫でした。

≪湖に沈む夕陽≫は、モネの絵画かと見まごうばかり・・・、輪郭も、具体的なフォルムもなく、そこには色彩と光だけ。
ただ、モネの絵よりもずっと絵の具の使い方が大胆で激しさがあります。ターナーの気性が現れているのかもしれません。

≪スピットヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船≫
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展覧会を見ていて、今回いくつか自分なりにおもしろかったことがあります。

例えば、この≪スピットヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船≫の向かって左下に描かれた黒いもの、たぶんブイだと思うのですが、さりげなく書かれていますが・・・絶妙の近景の使い方だと思いました。
このような絵が他にもありましたが、絵画の中に奥行を与えて、風や大気やそういうものを描き込むにはとても優れた方法だなと思いました。

≪チャイルド・ハロルドの巡礼-イタリア≫
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また、≪チャイルド・ハロルドの巡礼-イタリア≫も面白かったです。

夏目漱石の「坊ちゃん」の中で、島に生える松の姿がターナーの描く絵のようだとして「ターナー島」と呼ばれる島が出てきますが、この作品の松がモデルではないかといわれています。

≪チャイルド・ハロルドの巡礼-イタリア≫
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そのエピソードもですが、この峡谷の描き方、すごいと思いました。
峡谷に満ちている大気・・・、その感じの出し方、描き方。しばらくじっと見つめてしまいました。

≪グリゾン州の雪崩≫
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何枚かは以前の展覧会で見たことのある絵でした。この雪崩も20数年ぶりの再会です。

≪グリゾン州の雪崩≫
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前に見た時はこんな見方をしていなかったのかもしれません、今回見て気が付いたのですが、雪崩の描き方がすごいと思いました。
パレットナイフを使っているのだと思います。
ナイフの荒々しい使い方、雪崩の猛々しさ、自然の恐ろしさが見る者に伝わってきます。

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ターナーって本当に色んな描き方をする画家です。

この絵だけでなく、今回140枚の絵画をゆっくりと見ることができ、ターナーの作品の多様性、内面的必然性をより忠実に表すため、色々な試みがされたのだとういうことが良く分かりました。

2万点以上の絵を国に遺贈したことで、作品が散逸することなくテート美術館に収蔵されたことはぼくたちにとっても本当に良かったと思います。

まだまだ研究が進められている様なので、これからもターナーに関する新たな発見があるかもしれません。

また、何年か後に来てくれるといいな。でも、その時は腰が曲がっているかもしれない 笑。

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開館と同時に入りましたが、ゆっくりと2時間近く見ていたので、そろそろお腹が空きました。

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銀座に出て、いつものお店でビールを飲みながらと思いましたが、建物が大規模改装中でお店はお休み中。

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ではと、新規開拓でイタリアンのお店でランチをいただきました。

サラダとマルゲリータ、ドリンクバーで1,200円也。もちろん、喉が渇いていたのでビールも頂きました。

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銀座は「銀茶会」なるイベント。

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「銀茶会」

" 銀座の街そのものが野点の会場となる、ライブ感あふれる催し「銀茶会」。今年で12回目を迎え、銀座の秋の風物詩として親しまれています。 "

なるほど、野点なんですね。それに12回目なんだ。知らなかった。

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でも、銀座の街には野点も、和服の女性も似合っているかも。

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お腹はいっぱい、良い絵たちに会えたし、

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ほろ酔い気分で銀座から東京駅まで、秋の街の散歩を楽しみました。

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いいな、休みの日の銀座、京橋、東京の辺りはとても落ち着いていて、のんびりと歩くことができます。

丸の内ブリックスクウェアの柔らかい日差しも大好き。

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今年はあと2か月あります。

まだトーハクのチケット( 「京都」 は見逃せません)もあるし、展覧会には何回か行きたいと思っていますが・・・、「ターナー展」はすごく良かった。

久しぶりに頭がくるくる? 廻りながら見た展覧会になりました。

何年か後にまた見たいです。次にターナーと会った時、どんな風に自分が感じるのか、 それも楽しみです。

" 2013/10/27 TURNER "
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